ギフトボックス


配布時期
1965〜1966?


(資料協力:高島秀一郎 様)

このところ完全に枕詞になってしまい恐縮至極です。「本当に久々の更新です。お待たせしました!」

あれはちょうど1ヶ月前のことでした。当研究室と親交のある高島さんから「こんなのどうですか」という表題が付いた画像添付メールが届きました。「何時も行っている模型屋からこんなものが出て来ました。もうお持ちだとは思いますが一応念の為写真を送ります。」開いてみてびっくりです。確かに見覚えのある船員さんの写真ですが、それが印刷され横には“GIFT”の文字が見えます。どうやら何かの箱のフタを展開したもののようですが、タミヤにギフトボックスがあったなんて初耳です。

すぐに「こんなの初めて見ました!凄いですね」と返事を出したところ、驚くべき続報が届きました。「勿論このギフトセット用未組立新品箱(?)はプレゼントさせて頂きます。ぜんぶで○セット出て来ましたので3セット送ります。」「!!??」

といったわけで、なんと3セット(上下箱)も頂いてしまったのです!タミヤ本社に現存していないのは明らかですので、高島さんの意思にそって1セットは静岡タミヤ本社へ寄贈し、残りの2セットのうち1つは組み立てて公開し、1つは保存用とさせていただきました。

ちょうど幕張メッセでプラモデル・ラジコンショーがあったので、タミヤブースへ直接持ち込みました。幸運にも俊作社長に直接お話できる機会を得たので聞いてみました。「これはまた凄いものが出てきたね。う〜ん、あんまり記憶にないなあ。でもボックスサイドの“PLASTIC MODEL GIFT SET”という文字は、僕がレタリングしたんだよ。それは覚えているからなあ。確かこれはこの中にキットを詰めて静岡から発送したんじゃなく、箱だけを販売店に配って、各々の販売店でキットを入れてもらったんじゃなかったかな。」との証言を得ました。先の模型店のご主人の証言によると、1/72フライトシリーズなどを3個詰めたそうです。模型店の倉庫から未組み立ての箱が見つかったことからもわかるように、やはり個々の模型店で独自に梱包していた模様です。

ところでこのギフトボックスで販売された時代特定ですが、隼の完成品を持った船員さんの写真が撮影されたのは1964年の秋であるのは、すでに撮影者である俊作社長の証言ではっきりしています。事実、1965年版総合カタログの表紙にもなっています。このギフトボックス自体にタミヤのロゴマークが無いので、一瞬「三ツ星などが配り、他社のキットも入れたのか?」とも思ったのですが、ボックストップやボックスサイドの線画イラストがすべてタミヤ製品ですのでその疑いは消えました。その線画イラストはボックスサイドには左から、零戦、隼、五式戦、震電が描かれています。ボックストップには同じく隼、零戦があり、クルセーダー、鈴谷もあります。この中で一番新しいのは1965年4月発売の震電ですから、このギフトボックスは1965年の夏以降に配られたことがわかります。ちょうどロゴマークの切り替えの時に重なりますので、このギフトボックスに一切のロゴマークが無いのはそんな理由もあるのかもしれません。ギフトボックスといえば1950年代半ばにはアメリカRevell社が既存のキットを詰め合わせにして新しい箱を作りギフトセットと称して豪華さを醸 し出していましたが、その回帰現象だったのでしょうか?

基本に立ち返りますが、このギフトボックスに詰めることが出来たキットは時代背景も考えると次のようになります(すべて¥100のキットですね)。
1/72フライトシリーズ(零戦、鍾軌、雷電、疾風、震電
ワールドタンクシリーズ(ハンター、スターリンデストロイヤー、ロングトム、クルセイダー、チャフィー)
チャンピオンシリーズ(サーブ1、スーパーファースト、ジャガーD、ニューエルバ)

¥120で発売されていた魚雷艇シリーズもどうかな?と思ったのですが、こちらは微妙に箱の高さが高く、また横幅も小さいため入れなかったものと考えられます。もちろん、このギフトボックス自体に描かれていた1/50フライトシリーズの五式戦や、1/400重巡洋艦シリーズの鈴谷は箱の大きさが合わないため入りません。

今回、実際に35年の歴史を越えてギフトボックスを“組んで”みたのですが、キットを3個入れて手にするとずっしりとした重さがあり高級感があります(定価は¥300なんですけれど)。これを買ってもらった当時の子供たちの喜びはどんなだったんでしょうね。

最後になりましたが、素晴らしい研究素材を事も無げに3個も贈って下さった高島秀一郎さんに、改めてこの場を借りて感謝いたします。ありがとうございました。

(2001/10/25)


メールに添付されていた画像です。 上下箱のセットで、3セットも届きました。
1/72フライトシリーズを入れるのがスタンダード。 1965年版総合カタログの表紙と同じ写真。