高速9号


発売時期 発売時価格
1964/05 ¥100



世の中の流れ(?)に合わせて、セミスケール魚雷艇シリーズNo.4「高速9号」の登場です。

パンサータンクの成功からきっかけをつかみ、リモコンパットンの発売で完全に波に乗ったところでタミヤはこの64年夏に向けて、低価格の魚雷艇シリーズをスタートしたのです。一気に4つのアイテムを発表し、一年後に2つのキットが追加され最終的に6種類となりました。船体下部はいずれも共通です。

ボストーク(ソビエト) 高速9号(日本)
ケネディー(アメリカ) ポラリス(スウェーデン)
ボスパー(イギリス) 魚雷艇1号(日本)

キットはTKK15モーターを使用し、単三電池2本を横に並べて搭載しました。その後マブチモーターからあの偉大な「S−1水中モーター」が発売されると、吸盤で取り付けられるように船体下部が改良され、成形色もそれまでのグレーからアイボリーに変わりました。この時、船体の機密性を完全にする為にスクリューシャフトが通る穴はふさがれ、TKK15を使う場合は穴を開ける事になりました。また、水中モーターが使えるようになった事をアナウンスする為、箱の表に黒と金の丸いシールが張られました。

その後ロゴマークの変更に伴い、(やはりこの水中モーター使用可能になった事を強調したかったのか)68年春に中身は一切変えずに箱の装丁が変わります。ライフジャケットをまとったキャプテンのイラストも入り、すっきりしたデザインの2代目になりました。さらに年少者にももっと作りやすくのコンセプトで「カセットパネル」と「スイッチレスモーターFA−132」を引っさげ、71年春に高荷義之画伯の絵で3代目が登場します。モーター付きで¥200。コードの配線が無くなり、モーターと電池をパチンパチンとはめ込むだけでOK。さらにスクリューをちょんとはじけばモーター始動のスイッチレスでいっそう親しみやすくしました。余談ですがこの機構はミニベビーモーターにも使われ、馴染み深いものですが、今から2年程前にマブチがミニ四駆用のモーターとして新発売としました。しかし世はプラズマダッシュモーター時代でパワーがもてはやされており、あまり売れなかったようです。

ところで、少年時代に持った「タミヤはスケールキットしか作らない」といった先入観は相当なもので、当研究室助手はほんの数年前まで、このキットはスケールモデルと信じておりましたが、6種類のキットの船体下部を共通にする為もあり、かなりデフォルメ(寸詰まり)されています。これを初めて紹介し、そのデフォルメの縦横比まで言及したのは幻の(まだ在庫はあるそうです)絶版キット紹介同人誌「プラモデル・レテ」です。私のバイブルの一つであるこの本を書かれた高見氏は魚雷艇についても造詣が深くPT109コレクターでもあります。よろしければこのPT9についても情報を頂けると幸いです。

前後しますが、この魚雷艇シリーズの船体下部を流用してSFボートシリーズが発売になった事を改めて触れておきます。ところで3代目になった時、どうした訳かこのNo.4「高速9号」だけ製造停止になり、欠番になってしまいました。そう言われてみればNo.6のPT1は「魚雷艇」1号というキット名なのに同じPT9が「高速」となるのはちょっとなじみません。このあたりにも製造中止の原因があるのでしょうか?


左:初版、
右:水中モーター吸盤の為、丸いへこみがある
初版高速9号パーツ
ひょうたん型の部品は電池ケース
2代目の「ポラリス」 3代目。高荷画伯作品


3代目のボックスサイド


初版のインスト。スイッチが甲板上ににゅっと出る。