ゴムキャタピラの保存(その1)


序文
言うまでもない事ですが、タミヤに限らず70年代初頭までのモーターライズ戦車は、ほとんどがゴムキャタピラでした。グリップ力の強さから来る登坂能力の素晴らしさはもちろん、扱いやすさも抜群で、左右旋回させると外れてしまうという重大な欠陥はあったものの、何より他に考えられる素材は無かったというのが実状ではないでしょうか。

タミヤの1/35戦車シリーズも、1969年に発売されたキットNo.23のパンサーより前は、すべてゴムキャタピラでした。T10スターリンやT34などのキットを大切に保存されている方もいらっしゃると思いますが、一番の悩みはゴムキャタピラをいかに劣化(腐敗、縮み、切れ等)から守るかだと思います。

そこで当研究室では、経験も交え、科学(化学)的に解析し、望ましい保存方法を考えたいと思います。


劣化はなぜ起きるか?
そもそもゴムキャタピラの劣化はどうして起きるのでしょうか?これについては「餅は餅屋」と、ブリジ○トンに勤める学生時代の後輩とメールをやり取りしたところ、おぼろげにわかってきました。興味のある方はこちらをご覧ください。

要するに、空気中の酸素や水分と反応して劣化が起こるのです。


これまでの保存方法や実態
1/35戦車シリーズの中では、その薄さも災いしてかT34(SU100)のゴムキャタピラが非常に劣化しやすく、硬くなってバラバラになったものをよく見かけます。それに対してT10(チーフテン)のそれは比較的安定しています。

これまでのゴムキャタピラの保存方法として、「ポリ袋に入れる」、「ティッシュペーパーでくるむ」といったものを見てきましたが、どれも決定的では無かったようです。キットの箱の中に大切に入れておいたのにボロボロになったものもあれば、ジャンク箱に片方だけ無造作に残っていたものが意外に元気だったりしているのです。

実話です。20年以上ダンボール箱の奥に眠っていたパットン戦車の完成品が、ある絶版ショップに持ち込まれました。ゴムキャタピラの状態も非常に良く、電池を入れれば走行も十分可能でした。よし!と店頭に飾っておいたところ3ヶ月で劣化してゴムキャタピラが切れてしまいました。

これは仮説を立てるに、ダンボール箱の中の空気中の酸素が何らかの状態で非常に少なくなり、ゴムキャタピラにとって安定した状態で20年間過ごしてきたのに、外に出された事により無限の新鮮な酸素と急速に反応して劣化したと考えられるのではないでしょうか。

また、ゴムキャタピラが劣化したのだけれど、これでも無いよりはマシと、箱の中に劣化したままのゴムキャタピラを残しておくと、幸運にも他から新しいゴムキャタピラを入手し一緒にキットの箱に入れたら、新しい方も数ヶ月で劣化してしまったという事があります。これも先の連鎖反応的に劣化が進むと言う事を考えると、新しいミカンの傍にわざわざ腐ったミカンを置くようなものと言う事がわかると思います。