スターリン戦車(小型)


発売時期 発売時価格
1959/09? 不明



久々の更新です。一口に久々といってもここ数年は拙作画像の公開が主でしたので、本来のメインコンテンツである絶版キットの歴史研究としては、なんと2002年3月のアポロ1号以来、いやこの時は追加更新ですから、純粋な絶版キット研究としては2001年9月のブリティシュファントム以来5年ぶりというとんでもない事になっています。

言い訳になりますが、歴史研究は決して怠ってきたわけではなく、アーマーモデリング誌において毎月連載記事として続けており、発表の媒体がWebから雑誌に変わったと認識していただければ幸いです。このアーマーモデリング誌の連載も丸8年目に突入しており、「いつ総集編が出るの?」と良く聞かれるのですが、土居スーパーバイザーも「当然やりますよ」が常日頃の口癖ですので、そう遠くない日に実現するのではないでしょうか?

そんな5年ぶりの更新のお題目は、木製戦車「スターリン戦車(小型)」です。時は昭和34年(1959年)秋、都会の一部では高額な舶来品のプラスチックモデルが流通し始め、前年の昭和33年12月には日本初のプラモデル(潜水艦ノーチラス号)がマルサンから発売されたこともあり、日本国内メーカーも急速に木製模型→プラモデルへと向かい始めた年でもあります。毎回お伝えしているように、木製模型のトップメーカーでもあったタミヤはその転換に乗り遅れており、この時期に新製品として発売したのが木製模型スターリン戦車です。

ところで、表題にある「小型」とは何でしょうか?それは文字通り「小型」なのです。木製スターリン戦車が発売された後に、同一アイテムで一回り小さな木製模型として発売されたのがスターリン戦車(小型)なのです。標準サイズのスターリン戦車の発売時期は日本模型新聞の広告により1959年9月と特定されていますが、小型サイズの方は発売時期が特定できていません。1959年9月25日付の日本模型新聞には標準サイズのスターリン戦車の広告に「模型では唯一の赤い星の戦車です」とあるので、小型の方がこの後になりますね。

今回紹介するのは、発売当事に作られたと思われる完成品です。工作、塗装ともに大変高い技術を持った方の作品であることが良くわかりますね。キットは薄い箱に入っていますが、組み上げるととても大きな物になることもわかります。

この木製スターリン戦車(小型)の完成品は、静岡のタミヤ本社歴史館にもありません。私が知る限りではこれまで雑誌などにもカラー画像で紹介されたことは一切無いはずです。ほぼ半世紀前のタミヤの“熱い思い”を是非味わってください。

(2006/05/07)


ラッカー塗料の筆塗り。塗りムラも全く見られない。 独特のバックシルエット。転輪が片側2個増設されている。
後部パネルは木片と金属線で組み上げてある。 マークも手書き。NO.152の意味は不明。
後部の逆転スイッチで前後進する(今も動きます)。 砲身に伸びるコードで砲口の赤ランプが点滅する
奥の緑の車体は“標準サイズ”のスターリン戦車 一回り大きく、さらに腰高なシルエット。
両キットのボックス比較(静岡タミヤ本社歴史館にて) 5年後の1964年発売のT10スターリンとの比較。

2006年5月6日に行われた可動戦車模型愛好会「東京オフ会」にて。

当事、貴重な資料として扱われた数少ない写真との比較。

組み立て説明書。まさに創意工夫が求められる。砲口点滅装置はパンサータンクの元祖。

昭和34年9月25日付の日本模型新聞広告。
英文は「ダーウィンがガラパゴス島に云々??」という内容。
一段下に「売上げ増加の秘訣はプラスチックモデル」と広告があるのはあまりにも皮肉。