発売時期 | 発売時価格 |
1966/04 | ¥100 |
お待たせしました。「アメリカミサイル潜水艦シリーズ」の登場です。正式シリーズ名称は殆どの方がご存じないのでは?所謂「100円の潜水艦シリーズ」です。 初版は以外に古く、旧ロゴ時代(黒丸マークがあるので、当研究室での厳密な分類では中期ロゴ旧です)までさかのぼります。エジソン、グレイバック、ハリバット、ワシントンの4つがほぼ同時に発売となりました。その後、年を経るに従って微妙な改修を受け、大きく分けて3種類の世代があります。 すべての世代に共通しているのは「自動浮潜」ギミックです。自重で沈み始めると、水の抵抗でレーダーに連動した潜行舵の向きが変わり浮上するというからくりですが、我が家の海域(お風呂)が狭すぎたか、ついにそのギミック再現に立ち会うことはありませんでした。 当研究室に幸いなことに全く同じ物が現在複数あるのですが、なかなか作る勇気がありません。 初代は船底の成形色が黒でなかなかシックで、2基のポラリスミサイルがスプリング発射します。スライドマークが裏焼きで、しかも薄い紙が張り付いているので一瞬驚くのですが、裏返しに張る水に濡れても剥がれない特殊スライドマークとわかり一安心でした。しかしそれだけに張り直しが許されない為、ちょっとした緊張感がありました。ところで浮力を持たせる為、船体上部裏側に気密室を2ヶ所作るのですが、子供達はこの蓋となる部分の接着剤が乾くのをどうしても待てず、水が入ってしまう艦が続出しました。 2代目になって、当然のごとく当時のルネサンスモーター「マブチ水中モーターS1」が使えるようになります。この水中モーターの自重に耐える為、タミヤはより強力なドラムカンタイプのフロートを3つもつけてくれますが、これ又うまく「自動浮潜」はしてくれませんでした。どなたか成功した方、体験談を大募集します!!ロゴマークの変更に伴って箱の装丁も大きく変わります。ボックスアート自体は変わらないのですが、水兵のイラストは変わりました。ちなみに、この2代目発売の記事は創刊間もないタミヤニュースVol.3(1967年5月号...3月発行))に載ってますので、初代はわずか1年間しか発売されなかったことがわかります。 この潜水艦シリーズは70年に入って一旦は製造停止となりますが、夏季限定生産キットとして生き続けます。総合カタログを見ますと、70,71,72年版では本文に記述はあるのですが、巻末の値段表に名前がありません。73年以降は本文、巻末ともに一切無くなってしまうのですが、突然75年版に巻末にのみ値段の一覧がでます。しかしそれ以降は再び活字で見ることはありませんでした。まさに深く潜行したキットとなりました。 そんな中、タミヤジュニアニュースVol.24(1974年3月号)に3代目が新製品として紹介されました。透明ブルーの船底はカッコ良く、しかもゴムの巻き具合が一目でわかるというすぐれものでした。しかしミサイル発射ギミックは省略され、船体上部にミサイルは一体モールドされてしまいました。これは安全面から考えても仕方がないかなと思ったのですが、なんと水中モーターもつけられなくなっていました。デカールもこそっと無くなり、インストも申し訳程度の大きさのペラ1枚となりました。しかもウリの透明ブルー船底もその後製造停止になり、黒に戻ってしまいました。これを3代目改としますが、いずれも潜水艦にとって苦しい時代の到来でした。 現在40歳前後の男性なら誰もが少年の頃見かけたことがあるキットだと思います。あなたが触れたのはどれでしたか? ちなみに、同時期の他社の潜水艦については、「たばささん」が詳しいので、そちらも是非ご覧下さい。 (1999/04/12) |
上記の更新からほぼ2年たって新事実(それ程でもない)がわかりました。「タミヤニュースの世界」の編集過程で過去に色々とタミヤニュースの読み落としがあったことが続々と判明してきてお恥ずかしい限りです。 タミヤニュースVol.111(1981/08)に「思い出のゴム動力潜水艦4点発売」の記述がありました...各200円で値上げもされていません。「やっぱりね。75年発売停止にしては割と最近まで見かけたような気がしていたよなあ」なんて思ったのですが、それでも20年前だったんですね。 「1981年夏期限定キット」。これが3代目改の真相ですね。 (2001/06/15) |
と、これで一件落着かと思ったら、潜水艦といえばMcCoyさんからメールを頂きました。ありがとうございます! 「3代目は150円だったはずですので、81年の3代目改の200円というのは値上げではないでしょうか?」 あら?そういえばそうですよね...と改めてゴソゴソやると、こまごまとしたことが色々とわかってきました タミヤの値上げはオイルショックを挟んで何度かありましたが、大きな値上げは1974年1月でした(第4期に突入)。3代目の発売がその直後の1974年3月で150円となれば、常識的にこの150円という金額は1979年11月の値上げ(第5期突入)まで保たれたと考えられます。一方、肝心のこの3代目はいつごろまで製造されたかを考えると、先に述べたように1975年版カタログ(1974年10月発行)の巻末リストに、値段表記はないものの載っているということは1975年夏までは販売されたと考えるのが普通で、少なくとも3代目は2年間は売られていたことになります。そして3代目改の告知に当たるくだんのタミヤニュースVol.111に「思い出の」という表現が使われるということは少なくとも直前の2〜3年間は製造されていなかったことが予想されます。この2〜3年前という期間に第5期突入の1979年11月が含まれるので、3代目改で初めて200円に値上げされたというのは十分説得力を持つことになります。そう思ってあらためてつぶさに3代目改の組み立て説明書を見たら、「8105(81年5月 )」の文字が小さく印刷されていました。 さらにこの潜水艦のバージョンの歴史とタミヤの住所の移転が微妙に絡み合っていることがわかってきました。3代目改の発売はは1981年5月ですが、前年の12月に恩田原に移転しているにもかかわらずボックスサイドの住所表記は小鹿628のままなんですね。さらにこだわれば3代目は小鹿50−1で発売されましたがその半年後に小鹿628に移転しているので、厳密には1975年夏に発売された「3代目」は“小鹿628、150円”のはずですが、そうなっていないはずです(もし、どなたか所有なさっている方は一報下さい)。 さらにこのエジソンのボックスサイドには3代目には「艦体下部は透明プラスチック製」という表記があるのですが、3代目改ではこの1行が削除されています。しかしなんとハリバットに関しては3代目改でも透明鑑底であったことが判明しました。しかしこの潜水艦はエジソン、ワシントンといった動力ゴムを艦内に置くタイプと、動力ゴムが艦体下部にむき出しになるハリバット、グレイバックに分けられるのですが、本来見えなくなってしまう巻き具合を外から確認できるという画期的なメリットがあったエジソン、ワシントンが透明艦底では無くなるのに対し、あまり意味を持たないハリバットがかたくなに透明にこだわった理由がわかりません。グレイバックの3代目改はどうなっているのか興味深いのですが、残念ながら富山ブラックホールに保管してあるためすぐには確認できません。 そういえば初代から2代目に変わるときに、過渡期として初代の箱に「マブチ水中モーター使用可能」のシールを貼って対応したものがあったことも判明しております。箱の中には「水中モーターを使用する場合」という別紙が追加されました。少年プラ模型新聞広告によりますと、そもそもTKKマブチS−1が発売されたのは1967年3月です。この直後にタミヤは対応したことになるのですが、初代からわずか1年後ということもあって箱替えまでは間に合わずにシール対応したと考えるべきでしょう。そうなると新パッケージである2代目の発売はいつか?この特定はかなり困難かと思われましたが、灯台元暗し、タミヤジュニアニュースVol.3(1968/05)に記述を発見しました。まさに新パッケージの装丁写真とともに、「今年から新しいパッケージで登場し人気を集めています」の文章があるではないですか!現在完了進行形の表現や水モノは3月頃から発売された当時の慣例から考えると、ズバリ新パッケージである2代目の発売は1968年3月!と言い切れるでしょう。 久々に豪快(?)な歴史研究にいそしんだと思いながら、「そういえば田宮模型全仕事3にはどうなっていたんだっけ?」と見てみると、ちゃんと“2代目の発売は1968年3月”としっかり書いてあるではないですか...(-_-;)。この本のキット発売時期特定は当研究室助手がすべて監修しておりますが、いったい私は今回何を見ていたのでしょう?良〜く胸に手を当てて考えてみると、そういえばあの時ジュニアニュースを調べていたかすかな記憶が...確かに田宮模型全仕事の発売時期特定は膨大な資料との戦いの激務でしたが、自分のやったことを忘れてもう一度調べていた私って...。 ここまで読んできた方ではっきり理解できた方は一体何人いらっしゃるでしょう?表にまとめてみるとようやくすっきりしました。つまり大きく分けて潜水艦は5種類あるんですね。キットNo.の表記にも3種類あったことが確認されております。
もう一つ、大切なことを書き忘れていました。2年前には「自動浮潜はしてくれませんでした。どなたか成功した方、体験談を大募集します!!」などと書いていたのですが、その年の夏に行われた「第1回水モノオフ会」で、当研究室助手自らが作ったハリバット(S−1仕様)が面白いように自動浮潜に成功しました。四半世紀のトラウマが霧散した瞬間です。「シーリングをしっかりして乾くまで1日待つ」なんてことが出来るようになったからですね。う〜ん、オトナだなあ... (2001/07/03) |
2代目。水中モーター使用可になった。 | 3代目。ミサイル、水中モーターが省略。 |
初代。裏転写スライドマークに緊張した。 | 2代目。水中モーター用フロートが付いた。 |
3代目。クリアーブルーの船底。 | 3代目改。船底が黒に戻った。 |
上:初,2代目。ポラリスミサイル発射口あり。 下:3代目。ポラリスミサイル一体モールド。 |
上:初代船底。旧ロゴが刻印されている。 中:2代目。水中モーター取り付け部品用の穴があく。 下:3代目改。旧ロゴの刻印が消えた。 |
デザインだけでなく、箱の大きさも微妙に違う。 | 左:初代。1/400重巡シリーズの紹介もある。 中:2代目。裏表がある丁寧な記述。 右:3代目。小さなペラ一枚、しかも表だけ。 |
これが衝撃の自動浮潜のしくみだ! |
垂直に飛び出すポラリスミサイルは、若き助手少年の目にも当たりました。 |
2代目にのみ、水中モーターが取り付け可能。フロートを忘れると永遠に出会えなかった。 |
少年ブック1967年3月号、「少年プラ模型新聞」内広告より。 |
上:3代目、下:3代目改。キットNo.にも注目 | 上:3代目、下:3代目改。透明パーツの記述の違い。 |
初代改(ワシントン)に貼られた水中モーターシール。 |
初代改に入れられた追加説明書。 |