T-10スターリン重戦車

発売時期 発売時価格
1964/11 500円


あのT-10が色々あった末にこんなプロポーションになりました。「本人が堪能」これが全てです(笑)。


「T-10スターリン」・・・このキットも原体験から含めて思い出深いものの一つです。子供の頃になんといっても強烈だったのが「赤外線ライト」が赤く点灯したことでしょう。これは文句なくインパクトがありました。そしてコイルスプリングが入っていたことも驚きでした。今から考えると当時当研究室助手がこのキットを入手して作っていたのは1974年頃ですので、この時点で発売から既に10年経っており、前述ギミックは発売当時から兼ね備えていたものだったことも驚きです。その後、長い月日が流れアーマーモデリング誌連載のため、自分が小学生時代に作った残骸を帰省して回収し再チャレンジして作り直したのが2003年でした。さらに2008年に再び大改造に入ります。

つまりざっくり言えば、発売から10年目に初めて自分が購入して作り、40年目に再チャレンジし、45年目にさらに大改造し、今年が発売から50年の節目になるキットなのです。

時は2003年の8月。お盆に実家に帰省した時にかつて子供の頃作ったスターリンの残骸を回収してきました。ホコリが表面にこびりつき、トーションバーは折れ、ゴムキャタピラは残っていません。砲塔の手すりは全て折れており、最重要アイテムの赤外線ライトは欠損していました。この時の目的はアーマーモデリングでこのキットを取り上げるにあたり、オリジナルは新規に無改造で作るとし、もう一つ作りかつての模型少年が思っていた「大西画伯のシングル版ボックスアートにどこまで近づけるか」をやってみたくなったからなのです。

「◯◯が1mm違う」などというのではなく、大西画伯のイメージにどこまで近づけるかですので、気が楽です。いかにカッコ良くするかなのです。まずは一番気になっていた砲塔形状の大改造に移ります。本来はエポキシパテなどを使うのですが、簡易にやる方法として瞬間接着剤とプラ粉末で行いました。大改造になるので多少の粗さは気にせず、机の上にあったヤスリでのプラ削り屑などもどんどん使いました。小物はタミヤMMの最新作JS-Vから流用し、鋳造肌を再現するため溶きパテも多用しました。最終的にかなり明るめのロシアングリーン塗装とし、2003年11月発売のアーマーモデリング誌の片隅に掲載してもらうことが出来ました。

それから5年たった2008年3月、また新たな機会がタミヤオフィシャルからもたらせれました。この2008年3月22日に発売になった4ch1/35RCパンサーGのユニットを無償提供するので5月の静岡ホビーショーまでに既存のタミヤMMキットに移植して完成させてもらえる方を募るというものだったのです。新発売になったこのユニットはモーターやギアボックスも完全新規のコンパクトサイズで、4chRCユニットも見事な新規設計でした。当然予想される今後の展開を応援するためにも「ファンの方々が作った1/35の4chRCの可能性」という展示をタミヤオフィシャルブースでしてもらえるというのです。可動戦車愛好会の皆様に声をかけたところ快諾の嵐で一気に実現することになりました。このシリーズの開発者であり最高責任者であるタミヤの滝博士の名を取って、我々は「滝プロジェクト」と呼び合っていました。

呼びかけ役になった私も当然参加させもらったのですが、「多少変わった人がいてもいいですよね」という、いつものスタンスで(笑)、本来は現行品のミリタリーミニチュアシリーズ(MM)のキットを使わなくてはならないのですが、私だけ絶版品のこのT-10スターリンを改造することを許していただけました。同じくパンツァーグラフ誌で「タミヤの戦車キットのルーツであるパンサータンクをオマージュした作品」として製作していたオヤジ博士の作品も同時展示されることが決まりました。

これで当研究室助手としては、既に完成していたオリジナル無改造のT-10にユニットを移植すれば良いだけだったのですが、タミヤオフィシャルブースに展示させてもらえる千載一遇のチャンスを逃すものかと、車体上部差し替えでディテールアップ版も同時に作り直すことにしたのです。幸いT-10の実車の画像もネット上にかなり出ておりました。といっても車体の寸法などは替えられません。あくまでも実車写真を穴のあくほど見つめながらの独自解釈でのディテールアップです。実車写真がある差は大きく、5年前に良かれと思ってやったことをどんどん自己否定して作りなおしました。塗装も重厚感のあるダークグリーンベースにし、オトナの味(?)の渋いアルバニア軍マーキングにしました。

今から思えば、この2008年5月の静岡ホビーショーは本当に色々あった密度が濃いイベントでした。この「滝プロジェクト」、そして「タミヤの動く戦車大全」発売、さらには「1000人のサプライズ計画」・・・我ながらバイタリティがあったなあ〜・・・と遠い目で(笑)。



※さて、このT-10スターリンの更新で10年以上にわたって長らく宿題になっていた当研究室HPの「完成品ギャラリー」の“工事中”をようやく全てクリアしたのですが、その後も色々と作り続けていたものがありまして(笑)、この更新と同時に自分の首を絞めながら新たな宿題を多数リストに追加したのでした。

(2014/03/22)


当研究室助手にとってT-10と言えばこの大西将美画伯のボックスアートです。
2003年に、小学生時代に自分が作った残骸を実家から引き上げてきました。
砲塔の形状を大幅に変更したいため、裏側を盛ります
瞬間接着剤を流しながらプラ粉末をふりかけるのですが、一見すると机の上のゴミですね。
特に気になっていたコマンダーズハッチ周りの形状は大幅に修正します。
裏打ちされたので、惜しげも無く削り込んでいきます。
とりあえずこんなイメージで手打ち。重機関銃は新作JS-Vから流用。
マズルブレーキの形状もそれなりにこだわりました。伸ばしランナーで溶接跡(?)再現。
鋳造肌再現で表面を荒らすため溶きパテを叩きつけます。このままでは荒れ過ぎです。
表面を400番程度のサンドペーパーでやすればイメージ通りになりました。
大西画伯のボックスアートを再現にこだわりました。溶きパテもまだ荒れてますが・・・
これまた400番でやすると鋳造肌のいい感じに。
下塗り剤を兼ねて艦底色で塗装。表面処理に満足です。
リモコンパッケージの高荷画伯ボックスアートのイメージも取り入れ、この色に決定。
右のノーマル版と比較。形状が激変しているのをわかっていただけますか?
キャタピラもタミヤMM最新作のJS-Vから流用。手前はオリジナルゴムキャタピラです。
アーマーモデリング誌(2003年12月号)連載のため参考オバカ作品として完成。
5年の月日が流れ・・・2008年5月、急遽大改装を決断。
惜しげも無く(?)手を入れていきます。
ネットで実車画像資料が手に入ったため、そちらを参考に大改造。
砲塔の手すりもより細く、位置を修正。側面の工具箱の形状もディテールアップ。
後部左右の工具箱もT-55のパーツを流用しながら自作。
渋いダークグリーン塗装にアルバニア軍マーキング。オトナだなあ〜と悦に入る。
色々とベストアングルを探る。自宅簡易撮影セットにて。至福の瞬間。
かなり気に入っているアングルです。
T-55やJS-Vから移植した小物も効果的です。
砲塔の鋳造肌表現も満足。本人が納得しているんですから幸せ者です(笑)。
オリジナルは50年前(1964年発売)のキットなんです。
オリジナルと並べて。誰ですか?「「ほとんど差がわからない」なんて言ってる人は。
オリジナルのお約束の赤外線ランプは、当時のオリジナル豆球で点灯します。
実はゴムキャタピラのオリジナルは「羊の皮を被ったオオカミ」仕様
最新の4chRCユニットを発売前に改造して搭載しました。
砲身が一定の角度(5度くらい)に上がると、スイッチが入り赤色点灯する設定。
オリジナルT-10のベストアングルです。
当時の少年雑誌にこんなアングルの写真が登場してましたよね。
「静岡ホビーショー2008」タミヤ公式ブースにて。
4ch1/35RCユニットがタミヤファンによって既存のMMに続々と組み込まれ
シリーズの展望を予感させる「参考作品」として展示されました。
ヘッツアー(!)、KV-T、メルカバ、61式、JS-2、B1bis、M2ブラッドレー、チャーチル
T-34/85、M551シェリダン、M3リー、90式、パンサータンク、T-10
・・・これがすべて4chRCに改造。「プロジェクト滝」と呼ばれ隠密裏に準備押されました。
ガルパンブームを5年前に予感するようなラインナップです。
この時まさに「タミヤの動く戦車プラモデル大全」が発売となったのです。
そしてこのホビーショーではとんでもないサプライズ計画も同時進行していました。
T-10の初版は1964年11月発売。
このボックスは小松崎茂画伯の自宅に伺い生前、直接サインをしてもらいました。
高荷義之画伯のリモコン版ボックスアート。スターリンのオルガン(ロケット砲弾)が印象的。