海上自衛隊SH-60Kヘリ
(タモリ倶楽部出演作品)

なんと本物の「たかなみ」のヘリ格納庫の前です!


当研究室助手の本業が何かは、このサイトをご覧の方の半分くらいはご存知かもしれません。これまである程度普遍的な単語を使って表現してきましたが、今回だけは思いっきり固有名詞が出てしまいますね(笑)

時は2010年7月上旬のある日、「タモリ倶楽部」のスタッフから当研究室助手の携帯電話に直接連絡がありました。
ス:「例によって急な話なんですが、今度横須賀の海上自衛隊で収録をやるんですが、これこれこんなヘリコプターの模型はお持ちではないですか?」
助:「う〜ん、持っていませんが、確か市販品で出ていますよね、なんとかなるでしょう、1週間後ですよね、大丈夫ですよ」
ス:「え!!本当ですか!!じゃあ出演もおねがいしますね!」
助:「あ、出演は別問題ですのでシフトデスクを通してくださいね〜、私個人はもちろん大歓迎です」

電話を切ってから軽い気持ちでネット検索しました。海上自衛隊のヘリのプラモデルでしたら確かハセガワから出ていますので、素組みなら3日もあれば出来るでしょうというつもりでした。「えっと、確かSH-60Kと言ってたよな・・・、あ、これか。で、模型は・・・と、確かハセガワで・・・あれ? え???・・まさか・・・・そんな・・・・(汗)」

そうなんです、1/72スケールクラスで市販されているのは旧タイプのSH-60Jだけで、最新型のSH-60Kは1/700しか発売されていないんんですね。じゃあ改造するしかないなあ〜と思ったらこれが大変、簡単そうに見えてかなり大掛かりで奥が深いのです。幸いだったのはネット上に画像がふんだんにあることなんですが、詳細な図面は見つけられません。さらにどれだけ探してもネット上に1/72の作例もありませんでした。こうなれば俄然張り切ります。こんなメジャーな機体は間違いなく早晩キット化されるから、その前に作ればおそらく世界初の作例だ! となったのでした。

日曜日から作り始めて本番は6日後の土曜日の早朝だったのですが、この時は毎朝3:30出社という早朝の仕事をしていましたので自宅で中々時間が取れませんでした。例によって毎日mixiで途中経過画像をUPして皆さんに応援してもらいながらナントカたどり着きました。ポリパテが乾かなくて最初からやり直したり、エポキシパテの乾燥時間と勝負したりと相変わらずのドタバタでしたが。「厳密に作るのではなく、SH-60Kにしか見えないことくらいを妥協点に」「間に合わせること」がプライオリティーでした。おそらくオンエア上は10秒も映らないと思いますが、その10秒のために全勢力を注ぎました。

何と言っても特徴的なのはメインローターの先端です。先端の角度を10度上半角、20度下半角、50度下半角とすることにより揚力を10%も向上させたとされていますので、ここは外せません。この改造は簡単そうに見えてかなり厄介です。でもそこは道具に頼りました。ヒートペンです。これがあれば自由自在にローター先端の角度を変えることが出来ました。溶けてはみ出した部分はあとで処理ます。この改造を筆頭にエポキシパテなどを使ってどんどん進めていきました。初めてヒートプレスもやってみました。悩むより慣れよですね。この時、いろいろな新しい道具を試しましたが、隠れたヒットになったのはこの年の4月に新発売になったiPadでした。今となってはどなたでも持っているiPadですが、発売と同時に入手しながら今ひとつ有効な使い道を見つけられないでいた(爆)当研究室助手でしたが、ネットで拾った画像をサクサク管理して、簡単に拡大縮小することにより手元資料として大活躍したのでした。

最後の金曜日の夜は限りなく徹夜になりましたが、なんとか完成させて京浜急行で横須賀に向かいました。事前に登録してあったから当たり前なのですが海上自衛隊のゲートを通り広報の方に挨拶したら「聞きましたよ!60K作って来られたんですっって?あれ、市販品にはないんですよね」といきなり言われていまいました。ま、マズイ・・・情報が漏れている(じゃないでしょ)。控室でスタッフにも見てもらいましたが、「お〜!素晴らしい!!」なんておだてられて苦労が一気に吹き飛びます。この時のタモリ倶楽部は「海上自衛隊全面協力 護衛艦たかなみの全て」という回で、前編後編の2回に分けて放送する大作になりました。

現場に行って初めてわかったのですが「たかなみベスト20」というテーマ設定で、その中でSH-60Kを紹介する予定だったのですが、当日の訓練項目にSH-60Kが入っておらず、本物のSH-60Kは木更津の基地にいて飛んでこないことがわかっていたのです。それでナントカならないかとスタッフが思いついたのが私に模型を作ってもらうことだったみたいです。「まあ、世の中にSH-60Kの模型がないとわかった以上、誰も作ったことがないだろうし、アラを指摘する人もいないだろう」との思いは大間違いだったことに現場で気づきました。なんと一緒に出演して解説をしてくださるのは“現役のSH-60Kパイロットさん”“現役のSH-60Kの整備士さん”だったのです・・・(汗)

「素晴らしいですよ!」「よく出来てますよ!ちゃんと扉が2枚でローターも!」お世辞とはわかっていても毎日本物に接していらっしゃるお二人のプロにそう言ってもらえてメチャメチャ嬉しかったです。そうそうタモリさんからも「相変わらず良くやるよね〜」と最高の褒め言葉を頂きましたし、ガダルウカナル・タカさん、カンニング竹山さんにもとっても褒めてもらいました。まさかこんなことで本業の役に立つなど夢にも思いませんでしたが楽しみました。

実はこのロケの翌々日が「水モノオフ会」だったのですが、このロケを終えて帰宅してから一気に1/700のたかなみをゼロから作って完成させ、見事に水上走行させることが出来ました。我ながら良くやってたなあ〜と思います。


(2014/03/27)


上:改造後のSH-60Kのローター先端 
下:ノーマルのSH-60Jのローター
ドアも2枚になるのでレーザーカットソーで切断します
左側面にあった25個の丸いくぼみをエポキシパテで埋めるためにドリルで貫通させます
塩ビの板をライターであぶってヒートプレスしました
こんな感じになります。バブルキャノピーと言います
機首先端には大胆にエポキシパテを盛ります
全てのローター先端を改造します。
機首をどんどん削りこんでいきます
真鍮線でアンテナも再現します
ご覧のようにiPadが大活躍しました。拡大縮小が一発で出来ます
自作デカールをパソコン上で作ります
時間との勝負のためウインドウは黒で塗装しマスキングしました。
これはかなり細かなマスキング処理になりましたが出来には満足。
どこかわかりますか?本物のSH-60Kベアトラップの上です
この日は30度を超すよく晴れた日でした
台本です。
オート・メラーラ127mm砲が見えます。ハンティングタイガーの主砲クラスが1分間に45発!
翌々日の「水モノオフ会2010」では無事にたかなみも完成しました
船体下部はハイドランジャーを流用してます(マニアックすぎる)