05月16日(日)

夢の静岡(3)

すべてのきっかけとなった1/16フルスクラッチ「ルクス」と
仲良く“白いまま”並んで(^_^;)・・・。
タミヤニュースVol.425(2004/10)参照


夢の静岡ホビーショー合同作品展2日目です

年に一度開かれる世界最大規模の静岡ホビーショー合同作品展は、全国のモデラーにとっての最大の目標でもあり祭典でもあります。当研究室助手も毎年『お客さん気分』で本当に楽しみにしておりました。しかし・・・今年はそれまでとは全く違う気持ちで迎えたのです。

もちろん一義的には軽装甲機動車のフルスクラッチを出品しようとしたからなのですが、実は今回、「合同展をより魅力あるものにするために何かが出来ないか?」と微力ながらも能動的に動いたあるプロジェクトに加わっていたからなのでした。

静岡ホビーショーは2004年の今年で43回目を迎えましたが、同時に会場内で行われる全国の模型サークルの展示会である「合同展」も15回目を迎えました。参加サークル数134は過去最多で、作品数5000点以上が一堂に会する形式の模型展示会は世界最大の規模。一昨年の第41回のためにに初来日し、親しくさせていただいたスペインの天才AFVビルダー、ミゲル・ヒメネス氏(MIG)やアメリカのアダム・ワイルダー氏が「こんなにexcitingなイベントは見たことが無い!世界一だ!」と興奮していたのを今でも鮮明に覚えています。

聖地静岡での夢の舞台・・・これは誰もが認める事です。しかし15年目ともなると「このままでいいのだろうか?よりみんなに愛される合同展は出来ないだろうか?」との思いが参加者のみならず主催者側から出てきていたのも事実です。もちろん「余計な事をしなくていいの、今のままでいいんだ」という方も大勢いらっしゃることも想像に難くありません。

ベテランの参加者の方々からも出ていた意見・・・「作る事に重きを置き、見せる事にまで気を遣っていない作品が多い。作品カードが無かったり、あってもエンピツで汚い文字の走り書き、内輪受けで意味不明のギャグが書いてあったり・・・。」「ブースの中にいる人がお弁当を食べていたり、徹夜明けなのだろうけれど寝ていたり、なんだかなあ〜という服装や身だしなみだったりしていて、来場者に対するサービス意識が欠けている。」「静かに始まって静かに終わっている。主催者側から来場者へ向けてのイベントが欲しい。」「女性が極めて入りにくい雰囲気がある。親子連れで来た家族も、奥さんが会場の外でずっと待っている。」・・・まだ色々ありますが、最後の「女性が入りにくい」というのは確かにこたえます。

そんな中、「我々個人ではどうしようもないこと」と言うのは簡単ですが、「決して大上段からどうこうするつもりは無いけれど、何かを提案できれば」と出来た会の一つが、今回の“輪会”だったのです。「模型本来の楽しみを充分に満喫しよう」「模型の一歩先まで楽しもう」というコンセプトでネット上でメンバーが集まりました。自ら「用務員です」と名乗るDr.スクラッチさんが献身的なまとめ役となり、着々とプロジェクトが進行しました。初参加のサークルですから与えられたスペースは非常に限られた面積しかありません。おのおの作品の大きさをcm単位で自己申告し、Dr.スクラッチさんが何度もPC上で図面を引いて配置を決めました。作品カードも事前に内容をネットで伝え、統一デザインでパネル化されていました。ブース内では飲食禁止、見学者には聞かれてからでなくても、積極的に説明しようということも事前に確認されました。

同じコンセプトで参加したサークルに“不老隊(注:プロターのあの方が隊長?です)”、“昭和の郷愁・さんにい情景友の会(注:最近32ダイコンの本もモデルアート社から出ましたね)”があります。いずれも大変な盛り上がりとなり、これらのブースの前はいつも黒山の人だかりという状況になってしまいました。あの“可動戦車模型愛好会”のひのき隊長をして「毎年、『我々のブースが一番人を集めているんじゃないかな』という自負があったけれど、今年はあの大きな飛行機が吊り下げてあるところに、完全にヤラレました」とおっしゃるほどでした。また我々のこんな思いと同じ事を考えていらっしゃるサークルがいくつもありました。全員統一の自分たちのサークルのロゴ入りのTシャツを着たグループや、見学者へ製作技術公開の実演コーナーを作ったグループもあり、何かが変わろうとしている感じが確実にうかがえました。

そんな中、「何かをしたい勝手連(^_^;)」のもう一つの大きな目玉としてあったのが、会場にステージを作ってのトークショーでした。先の女性対策といった安直な目的だけでなく、例えば北館と南館の間にある超大型ビジョンに場内の様子を映したり、そのトークショーを流すだけでも来場者に大きなアピールになるという考えがありました。企画発案は他でもない岡部さんとDr.スクラッチさん。この2人は年明け早々に合同展事務局に文書で企画を提出し、自費で静岡と東京を何度も往復して打ち合わせを重ねていました。信じられないかもしれませんが、この2人にはギャラなどは一切発生しておらず、企画が実現した最後まですべてボランティアでした。「静岡ホビーショー合同展をより良いものするために、何かをしたい・・・」その思いだけの行動です。企画を静岡に持ち込む前の段階で当研究室助手にもステージイベントにおいての協力打診がありました。もちろん私でよければとボランティアの大賛成です。ただし「この合同展を少なくとも15年間以上支え続けていただいている先輩サークルの皆様を立てこそすれ、間違っても新参者の我々が主役ぶるなどといった勘違いは絶対にしない」という大前提は最初から3人の共通認識にありました。

15回を数える合同展を、より良い形で迎えたい・・・この事は事務局にとってこそ長年の思いであっただけに、参加者(のごく一部ですが)側からのこうした提案はとても喜ばれ、検討の末、実現に向かう事になりました。ステージの新規設営、テレビカメラ、大型液晶ビジョン、マイク&場内PA、照明、技術スタッフ・・・乗り越えなくてはならないいくつもの壁も、事務局側の努力でクリアされました。

トークショーの大きな目玉は、やはり全国のモデラーにとって一番気になるトップモデラースターの金子辰也さんと山田卓司さんです。当研究室助手から春先に打診したところ「私に何が出来るかわかりませんが、喜んで」とお二方とも快諾を頂きました。5000超もの作品が展示されている中、作品に優劣をつけるのは本来の趣旨ではありません。しかし1位2位といった意味ではなく、2人が「これは素晴らしい!」と思われた作品に2人の名前がついた個人賞を贈るという企画にも快諾をいただけました。これが“金子賞”、“山田賞”です。そして出展サークルの皆さんにもっとスポットを・・・という趣旨で、第1回から15年連続参加している9つのサークルの代表の方すべてを一人ずつ壇上でご紹介し、それぞれのサークル名がついた「賞」を134の団体の中から選んでいただきました。さらにユーロミリテール金賞の松岡さんを始めとして「これは」と思われる方に続々と壇上に上がっていただきました。ちなみに「賞」の副賞として合同展事務局から「受賞盾やトロフィーを作りましょうか?」という嬉しい打診もあったのですが、「あくまでも記念にしたいので、静岡らしく『特製』安部川餅なんていかがでしょう?」というこちらからの提案に、120%のウィットに富んだ包装紙にくるまれた安倍川餅を事務局は用意して下さいました。

この企画が成功だったのかどうかは来場者の判断ですのでわかりませんが、少なくとも沢山の方々に喜んでいただけた手ごたえは十分ありました。“山田賞”に選ばれたジオラマは草木を1本1本植え続けそれだけで何ヶ月もかかった力作でしたが、壇上で山田氏から直接表彰されていた作者の照れた笑顔は忘れられません。また、“金子賞”は超絶技術を持った小学生が受賞したのですが、本人が前日までで帰ってしまい(塾のため?)、ステージ上では代わってお父さんが受賞しました。壇上でお父さんが携帯電話で、何も知らない息子に連絡し、直接金子さんから受賞を伝えるという思いもかけない形になり、大いに会場が沸きました。金子さん自身も、「いや〜、小学生がボクの名前を知ってくれていて嬉しかったよ」と喜んで下さいました。

実はトークショーの企画段階で、とんでもない話も実現直前まで行っていました。それは、あの石坂浩二さんを招いてのトークショーだったのです。ただのタレントさんではなく、モデラーとしても造詣が深いことは皆さんご存知だと思うのですが、なんとその石坂浩二さんを“ボランティア(つまりノーギャラ)”で呼ぼうという企画だったのですが「趣旨には大賛成です。ボクでよければ喜んで出ますよ。でも、その時期は残念ながら海外で仕事があって、日本にいないんですよ・・・。来年は是非呼んで下さい!」とのお返事となりました。あんな大スターでいらっしゃるのに、趣味の模型の事とはいえ、こんな素晴らしい返事がいただけるとは正直思っておらず、感激しました。その後、今年秋に行われた東京プララジショーの特別顧問(ポスターにもなりましたね)になられた事を聞いて嬉しく思ったのは当研究室助手だけではなかったと思います。

そんなわけで、当研究室助手は軽装甲機動車の製作で睡眠時間を極限まで削って七転八倒の静岡入りでしたが、実際は自分の作品の前に立つ時間はきわめて短く、土日2日間は、その大半をステージ上で過ごすという得がたい経験をさせていただきました。土曜の夕方は会場となった静岡ツインメッセアリーナにて恒例の合同展参加サークルメンバーによる懇親会。1年間、この日のために頑張ってきた全国のつわものモデラー至福の時であるこの懇親会の司会まで担当させていただきました。この後にあった「静岡の街中繰り出し大宴会ハシゴ大会」は1軒目で大変な事になってしまったのは前日の日記に書いた通りです。

それにしても・・・実質一人で「輪会」のテーブルをまとめあげて運営し、これまたトークショーの企画・進行でも八面六臂の大活躍をしたDr.スクラッチさん。日曜日のすべてのプログラムが終了し、片づけが終わったところでタミヤ某社員の方も交えて会場近くのファミレスでパフェで乾杯(この後、車の運転があった)した味は忘れられません。

「ク〜ッ!カッコ良すぎるぞ、この○ゲオヤジ!」  (○の中には「ヒ」の文字が入ります)

さて、肝心の軽装甲機動車は完成しないまま静岡に展示されたのですが、よくありそうな「展示も終わったし、まあ、このままでもいいか」とはならず、少々時間は開きましたが、いよいよ完成に向かう事になります。もうしばらくこの駄文日記にお付き合いください m(_ _)m

※下記の画像の一部を「鶴亀」さんからご提供いただきました。この場を借りてお礼申し上げます

(2004/11/08)


話題騒然、突然登場の「輪会」のテーブル
模型本来の楽しみを充分に満喫している方々ばかりです
ため息しか出てこない作品多数
長嶋さんの作品「Antoinette」はシンボルタワーに・・・
仕掛け人であり大車輪の活躍のDr.スクラッチさん
蝶ネクタイの正装(?)です(^_^)
決して着席せず、常に立ったまま。
サービス精神旺盛で来場者に応対します。
そのDr.スクラッチさんの作品。画期的発想の転換です
ナニが画期的かというと・・・→
×「作品にはお手を触れないで下さい」
○「作品にどんどん触れて、皆さんで発掘を手伝って下さい」
2年前のこの1/16フルスクッラッチメルカバとの出会い
助手にとって、今回の全ての始まりだったのかもしれません
さりげなく並んでいた1/16アイシャーマン
メルカバが無ければもっと正当な(?)評価がされたはず
かのーさんの1/16「M911タンクトランスポーター」
Dr.スクラッチさんの「メルカバ」と「アイシャーマン」を搭載
加藤さんの作品名「ブーン、バシュン、シュルルル〜」
アイデアだけでなく確かな製作技術の裏づけ
お隣のブース「昭和の郷愁・さんにい情景友の会」と並び
来場者の列が切れることはありませんでした
特に「昭和の郷愁・さんにい情景友の会」さんは
年齢、性別関係なく喜んでいただけたブースでした
そして背中合わせのブース「不老隊」には
とんでもないフィギュア、ヒミツのアッコちゃん。モデルは・・・
メンバーからあの岡部さんへの愛情あふれる作品
小物も遊び心満載です
ホンモノの軽装甲機動車がホントに来たのです 俊作社長の作品をホンモノのボンネットに・・・。
超絶フルスクラッチフィギュア。
見せることにこだわる「輪会」の統一作品カードにも注目
そしてフルスクラッチ軽装甲機動車も
ホンモノのボンネットの上に・・・。
本籍の可動戦車愛好会でのフルスクラッチ祭り。
なにげにある1/16フルスクラッチ74式戦車・・・。
タミヤアメリカのタミヤコン2004マスターモデラー賞は
日本人のMasaNarita氏!
垂涎の的?合同作品展で賞を取った方への副賞は
特別限定安倍川餅。包装紙が凝ってます。
これまた既成概念の打破
あの作品はこうやって梱包して東京へ・・・。
今回、初の試み。金子さん山卓さんのトークショー! 15回連続参加クラブの代表者の皆さんにインタビュー