5月15日(日)
<翌日>

TVスタジオ出演

サンデースクランブルのオープニングです。
まさにとんでもないニュースが飛び込んできたため、急遽スタジオ出演になりました。
1号機圧力容器には当時、毎時8トンもの冷却水を注入していました。24時間で192トンにもなります。
その水の量を模型で表しました。


急遽呼出しがあってスタジオ出演になったのにはもちろん理由がありました。2日前の5月13日に初めて1号機原子炉建屋の地下室に汚染水が溜まっているのを作業員が発見したと発表されたのです。この資料の最下段参考。しかも静岡から東京への移動中にその水深が4m以上あるという驚くべきことが発表されました。ちなみにこの図面でO.P.というのは小名浜ポイントといって小名浜港の海面高さです。1号機の地下1階の標高はマイナスO.P.1m23cmなのに、O.P.3m00cmのところまで水がたまっていることがわかりました(作業員の方々が、高線量を顧みず室内に入り巻き尺で測定しました)。つまり水深は4m23cmということがこの資料から読み取れます。

なんということでしょう!せっかく完成した模型だったのに、わずか1日で作り直さなくてはならなくなりました。地下室が水没しているというのです!今でこそこれは当たり前のニュースですが、当時は衝撃的でした。大量の水入を注入し続けていましたので、その水の行方から考えるとそうだろうなと個人的には覚悟していましたが、事実を突きつけられたのは大きかったです。

水深4m23cmというのは1/144スケールでは3cmになります。この模型の地下室を3cmの深さの透明プラバンで囲い、クリアーブルーをエアブラシしなくてはならいのですが、静岡から東京に戻っている新幹線の中ではそんな作業ができません。スタジオ出演時間も迫っている中、出来る範囲で最大にわかりやすく見せるしかありません。待ち受けるてくれているスタッフに理工系大卒の人間が一人いたのを思い出し、新幹線の中から電話しました。「すぐに美術さんに頼んでサイコロを1つ作ってもらって!それを水色の紙で覆って【192t/日】と書いてもらって!それで肝心のサイコロの1辺なんだけど、192の三乗根わかるよね、そう、ルートの二乗根じゃなくて三乗根。その1/144、ちょっと計算して!」

おそらく普通の人には何のこと?と思われると思いますが、瞬時に私の意図を理解した彼は美術さんに発注してくれました。かくしてスタジオに到着した私は模型を見せるだけでなく、「今、1号機には1日あたりこれだけの量の冷却水が注入されています。今回わかったのは地下室が汚染水で埋まっているということ。深さは4m以上あります。今、ここに同じ縮尺の作業員の人形があります。4mですので、この人形の背丈の倍以上の深さの水がここにあるということです」といった内容の解説を加えました。

この放送のインパクトはかなりのものだったようで、まず社内からすぐに反応があり「明日の朝と昼の番組にもスタジオ解説して欲しい」と連絡がありました。後日知ったのですがネットでも大きな話題になっており、娘から「パパの作った原発模型、ネットで絶賛されてるって大学の先輩が教えてくれた」という周りくどい情報で初めてそれに気付いたのです。

ちなみに翌日の早朝までは時間があるので、その日の夜のうちに地下のたまり水を透明プラバンで再現したのは言うまでもありません。

(2014/01/23)