中型戦車


発売期間 発売時価格
1955/5 ¥200



ついに禁断の扉を開けてしまいました。木製模型の登場です。

タミヤの戦車のルーツはなんといっても1961年12月発売の1/35パンサータンクですが、さらにその始祖をたどると、この「中型戦車」になります。

田宮模型の創業者、田宮義雄氏は戦前は運輸業を営んでいましたが、戦後すぐの1946年に製材業の田宮商事を設立します。翌々年に早くも木製木工部門を作り、1951年の工場全焼という不幸を乗り越え、1953年には木製模型専業メーカーとしてスタートを切ります。その2年後に発売になり爆発的なヒットになったのが、この「中型戦車」です。

いかにこのキットが古いかというと、発売になった時期は資料から逆算するに、長男の俊作氏(現社長)が早稲田大学に入学した1ヶ月後という事になります。「田宮模型の仕事」にあった「借金の取り立てをしながらなんとか」社長が生活を始めた時期ですね。

ではキットを見ていきましょう。ボックスアートはご覧の通り、まごうこと無いM4A3E8シャーマンです(おそらく自衛隊車両の写真をそのまま使ったと思われます)。格調高い「科学工作教材」という文字を見ながら箱を開けると、ゴージャスにも黄色のセロファンが内箱を覆っています。

パーツとしては金属ギアボックスとエナメル線といった電動部品、ゴムキャタピラ、そして細かな木製部品となっています。古文書の様な紙質の組立図は、非常に正確にキットの形状を捉えており、わかり易い物です。

「電池は直列で使用すれば2倍の力が出ます(直列連結法)」、「軸間距離160m/m」といった記述や、イロハ文字を使っての説明など、まさに科学教材ですね。M4シャーマンに似てる似てないという議論がここではヤボというのはわかって頂けると思います。

丁度戦後10年経っての¥200はどの位の価値があったのでしょう?このキットの原体験となるとなかなか無いと思いますが、我こそはという大先輩の方々!是非教えて下さい。

ちなみに1/35M4A3E8シャーマンが1970年5月に発売になりますが、自衛隊仕様の車体番号デカールは「213」で、父の果たせなかった完全スケールモデルのシャーマンを、15年経って息子(俊作氏)が世に送った事になります。
と、書いたのは1998年12月のことでした

その後の調査で、実はこの「中型戦車」の発売は1955年5月ではなく、1957年12月であること。そしてタミヤ初めての戦車模型は、この「中型戦車」ではなく、1956年11月に発売になった「戦車」であることが分かりました。

このことは「タミヤの動く戦車プラモデル大全」で詳しく掲載してありますが、しばらく注釈つきで、このままにしておき、しかるべき時に修正いたします。

(2008/05/30)


黄色のセロハンが子供心をくすぐったでしょう。 筆書きの組立図はツヤのある薄い紙質。
動力部品。ゴムキャタピラはとってもリアル! 木製パーツの数々。左端が砲塔部品。
完成するとこんなプロポーション。 ギアボックスは、他の工作用に別売りもされた。