「進め!ゴリアテ!!」

(「東京AFVの会2002」大賞受賞作品)



HPの更新はままならなかったものの(本当に申し訳ありません)、「I LOVE TAMIYA」展の全国5大都市での開催など、これまた激動の1年だった西暦2002年。その締めくくりに向かう11月は1週おきに“3大イベント”目白押しとなりました。恐ろしいことに、そのすべてに当研究室助手は参加してしまいました。

11月16日(土) 静岡タミヤフェア「RCタンクオーナーズミーティング」
11月24日(日) 東京AFVの会
11月30日(土) 動く戦車オフ会2002

ご存じない方の為に念のため。「東京AFVの会」というのは実に四半世紀以上の歴史を誇る、日本で一番歴史のある装甲戦闘車輌モデラーの、年に一度だけ開かれる集会です。主体となった「カンプグルッペジーベンの会」から続々と生み出される創造力にあふれた作品の数々は、今でも伝説になっているほど素晴らしいものばかりです。当研究室助手は少年時代から雪深い北陸の田舎でただただ呆然としながらその会の様子を、タミヤニュースに載るレポートで眺めておりました。呉光雄、十川俊一郎、熊谷徹、金子辰也、山田卓司といった模型少年にとって憧れの大スターが参加する会は、まばゆくキラキラ輝いておりました。昨今の助手の周りの環境の変化で、なぜかそのほとんどの方とお知り合いになれてしまった今も、「東京AFVの会」は畏れ多く神聖な会という意識は全く変わっていません。現在においても何の技量も持たない当研究室助手にとっては全くもって敷居の高い崇高な憧れのイベントなのですが、主催者でもある十川俊一郎氏の人柄に甘えて、数年前から不定期に駄作を持参しながら参加させていただいております。

今回の課題テーマは「ミニスケール(1/35未満)」です。丁度1週間前に参加した静岡のタミヤフェアで、会場限定先行発売されていた1/48ゴリアテを入手していたので、これを組み立てて持っていこうかなというのがベースでした。しかし静岡のタンクミーティングに参加したメンバーの反省会(という名の当日帰京した足での目黒焼肉飲み会)で自分の口から出た言葉(後述参照)を実行してしまうことになっていくのです。

まず考えたのは「締め切り6日前から作り始める上に技も無いんだから(ホント絶望的かつ失礼な話ですよね)、歴史的な絶版キットを組んでしまうという得意の作戦しかないだろうなあ」ということでして、幻のセントラルモケイの1/50ミリタリーシリーズを傍に並べることにしました。

セントラルモケイ・・・ライオンのロゴマークのこのメーカーについては既にプラモデルの王国のねこにいプロダクツさんが紹介なさっています。それにによると、ゼンマイギミックにおいての国内トップクラスのメーカーで、そのモールド(造形技術)の良さも一目おかれるところがある優秀なメーカーで、得意分野は自動車模型で、航空機やSFガンもラインナップにもありました。今回作った1/50ミリタリーシリーズは1960年代末期から1970年代初頭にかけて発売されたようで、シリーズNo.3まで発表されました。No.1が「ドイツ重装甲車Sd.Kfz.234」、そしてNo.2が「フランス無線装甲車」という、現在の目で見てもなんともマニアックなラインナップです(本当に売れたのか心配になってしまいますね)。そしてNo.3にあたる「イギリス戦車輸送車」は私の周りで発売を確認した人がいません。これが発売されていたとしたら、かなり大きなキットになっており大変な話題になっていたと思うのですが、どなたかご存知でしたらご一報をお願いします。1960年代末にタミヤが先行して作り上げた「動くスケールモデル戦車ブーム」に同スケールの1/35でニチモ、日東が追随するなか、セントラルモケイは一回り小さな1/50スケールで得意のゼンマイ走行というギミックを持って参入してきたのです。

いつもながらのことですが、製作塗装に当たっては技術的には何らお見せすることはありません。「ドイツ重装甲車Sd.Kfz.234」に関してはひのきさんの“初心者のためのコーナー”のエレファントの塗装方法を見ながらのナンチャッテ塗装。「フランス無線装甲車」についてもこれまたひのきさんの“ソビエトSU-85”の塗装方法を大いに参考にさせていただきました(ありがとうございます)。いずれも砲口だけはピンバイスで開けてあります。

そして本題のゴリアテですが、21世紀のタミヤの技術にあらためて唸らされる凄いキットです。パーツはなんと5個しかないので、あっという間に完成します。塗装して驚いたのですが、一体成型のキャタピラ表面にうっすらと彫ってあるモールドが浮き上がってくるではないですか!金型の抜きの方向から考えると信じられません。早く一般販売が待たれるところですね。

そもそもどうしてゴリアテを作ろうという気になったかと言うと、「あの小さなゴリアテを動かすんだよ!」という静岡反省会での助手自身の問題発言があったからでした。1/48スケールですと車体の実寸は3cmに満たないのです。いかに実車も有線遠隔操作だからバッテリーは外でいいといっても、転輪とキャタピラが一体成型ですから、これをまともにモーターで動かすとなると常人では出来ません(出来る人を約1名知ってますが)。そこで世を冒とくするあるアイデアが浮かび、みんなにその考えを披露してしまったのです。「面白い!」とウケました。その場で盛り上がりました。それだけのはずだったのですが、ムズムズと実際にやってみたくなり、勝手に責任を感じて行動に移してしまったのです。

その構造上、ジオラマ形式が選択され、台座にはある程度の高さが要求されます(あれ、もう何を考えているかわかりました?)。ゴリアテの実戦での使用状況から考えると市街戦の塹壕という状況が良いと思われ、鉄道模型のストラクチャからそれなりのものを用意したのですが(ホビーショップたくみさん、その節はありがとうございました)、技量と時間が無く、また走行性能から考えても単純な平面の草原としました。最終日はほぼ徹夜になったのですが、なんと大半はこのジオラマ台に時間をかけていました。外出する時間もとれず、やむなく地元の金物店で買った木目シートをペタペタ貼り、木枠もこれまた地元のお店で買った1本60円の角材をカットして作りました。意識だけは金子チャンプがかつてカンプ・イン・アクションに載せたジオラマ台の作り方のイメージで45°にカットするのですが、そんな治具もなく、深夜のため子供の三角定規さえ借りられず、「45°なんだから直角方向に同じ長さを測って、斜めにノコギリでカットすればいいんだ」という開き直りとなったのですが、やはり合うわけも無く、修正が大変でした。塗装もオイルステンを深夜に入手できず、「クリアーオレンジをエアブラシで吹けばなんとかなるだろう」という甘い考えは、とんでもない安っぽい仕上がりに返ってきて、あわてて現物合わせで黒や茶色を混合すると、二度と出来ないかと思われる素晴らしい色が出来たのですが、4分の3ほど吹き終えたところでその塗料が「プシュー」と無くなるというドタバタぶりです。

遅刻をしましたが、当日なんとか東京AFVの会の会場へ持ち込めました。入った瞬間、目の前に素晴らしい作品の数々が飛び込んできてすぐに後悔するのですが、開き直るしかありません。今回はこちらに“飛び道具”があるのです。予想通りセントラルモケイの知名度は限りなくゼロに近く、会場での反応は鈍かったです(あたりまえですね)。一緒に置いておいたゴリアテの箱(静岡では複数入手していたので、もう一つの未組み立てキットの方です)を見て「おお!これがタミヤの新作ゴリアテか!」と感動され、作品そっちのけで箱を開けて中のパーツを手にとって「凄いな〜」と言われる始末。穴があったら入りたい心境でした。恐る恐る「実は動くんです」とリモコンボックスのレバーを動かすと、一部の方にはバカ受けしてましたが・・・。

会の最後に表彰式があり、各部門賞が発表になりました。畏れ多くも密かに狙っていた(?)課題部門(ミニスケール)の3位に入れず、「当然といえば当然だよな〜」と恥じ入っていたのですが、最後に全く信じられないことが起きてしまいました。主催の十川さんが「我々も長くやっていると色々なことがあります。かつては作品を持ち込まれた段階で、今年はこれが大賞だなというのがわかったものですが、昨今は本当に多様化しています・・・。」という内容のお話をされ、そんなもんなんだな〜と思っていたら・・・「大賞は、作品ナンバー48、『進め!ゴリアテ』です」とのアナウンス。「へ?」・・・「今、なんとおっしゃいました?」・・・。唖然呆然なことが起きてしまいました。シャレにもなっていないじゃないですか!誰が見ても会場に展示してある作品とはレベルの差がはっきりしています。うれしいという気持ちはこれっぽっちもなく、申し訳ない、まずいという気持ちしかありません。わけもわからず前へ出て表彰を受けました。

あとで主催の方々に聞いたのですが、本当にダンゴ状態の得票で、突出したものが無く、その中でわずか1票差ながらですが現実に票数は1番だったのだそうです(総得票数の公表は控えますね)。25年以上の歴史を誇る伝統の会の、過去の大賞受賞者の顔ぶれを考えると本当にとんでもないことなのですが、素直に喜ばせていただくことにしました。技術で賞を取ったものではないことは、実際に会場に足を運ばれた方なら誰の目にも明らかです。でも「楽しんで作りました」ということだけは胸を張って言えます。

そんなわけで、拙作ですが、紹介いたします。

(2002/12/12)


ゴリアテ本体のパーツはわずか5個。 これは本当に発売になったのでしょうか?
梶田達二画伯の本格的ボックスアート。 こちらは画像提供:ねこにいプロダクツさん
人形もオリジナルで付いていたものです。 こうして見ても魅力的なデザインです。
こちらのフィギュアはロシアの某メーカー製。 台座のアップ。45°の切り出しが・・・。
リモコンボックスのレバーを倒すと・・・ こんな風にススス〜ッとゴリアテが動きます


動画でお伝えできないのが幸か不幸かというところです。実際にはとてもコミカルな動きです。

え?どうやって動くかですって?



ゴリアテをひっくり返してみると、東急ハンズで買った1個230円もする直径4mmの強力磁石が付いていますね。

それでもって、実はジオラマ台の中には複雑なギアボックスが縦横無尽に・・・ぢゃなくて・・・



「決して石を投げない」と約束できる方は、こちらをクリック!