War & Peace SHOW 2002 報告
未来永劫、人を殺傷しない「ブルーカラーアボット」です。 |
毎年7月に、イギリスのケント州ベルトリングで行われている「War & Peace SHOW」。簡単に言えば、現存する戦車類を個人(!)で所有する人たちが丁寧に可動状態にレストアして持ち寄るという、文字通り世界最大のとんでもないイベント(今年で25回目)です。 その存在は日本でも10年前にタミヤニュースVol.330(1997/02号)で三野正洋さんの「博物館をたずねて(番外)」で紹介され、その後アーマーモデリング誌でも毎年のようにグラビアページで紹介されています。 正直、当研究室助手にとっては『遠い海の向こうの手が届かないイベント』だったのですが、丁度5年前に突然思い立ってしまい、家族を説得して旅立ってしまったのでした(ちなみにプライベートで家族以外との海外旅行は、この時が生まれて初めてでした)。この時の2大目的地はボービントン戦車博物館とベルトリング。ボービントン訪問に関してはタミヤニュースVol.401(2002/10号)に拙文を掲載させてもらいました。 当時のタミヤニュース拙文ではベルトリングの方は、「もしも縁がありましたなら別の機会に」と締めているのですが、結果的にこのWebサイトでも公開していませんでした。ここに5年間寝かせていた宿題を公開します。このイベントに関しては、ダラダラ駄文を並べるより、画像を紹介するに限ります。大きな画像を何枚か紹介とも思ったのですが、この旅行で2000枚(!)も撮影しているのでなかなか選別できません。 そこでいつものサイズ画像ですが、普段より多めに紹介します。いかにこのイベントが世界最大の破格スケールで、かつてのMM少年にとってパラダイスであるかを少しでも味わっていただければ幸いです。 (2007/07/28) |
さりげなくキューベルワーゲンが! | 当然シュビムワーゲンも! |
赤い!ケッテンクラート | こうなるとサイドカーの存在は自然すぎます |
まさか“生きた”サラディンが見られるとは・・・ | ここは英国。スカウトカーなら簡単に発掘? |
フォードGPAがあれば | M8グレイハウンドもあります |
あ、8tハーフトラックだ・・・ | と思ったら、18tファモだ。デカい・・・。 |
25ポンド砲は発射可能 | この砲弾引き出しはMM少年にとってはmust |
見事なヘッッアー | ピンクパンサーまである! |
センチュリオンはしっかりMk.3 | M36ジャクソンの姿も |
なんとチャーチルクロコダイル火炎砲車戦車。 | ん?ブレンガンキャリアが動き始めた! |
なんとM26ドラゴンワゴンだ! | しかもM2GUNロングトムを引っ張ってる! |
現在、ドラゴンワゴンの可動車両は世界に数台とか | そうかと思えばこんなモンスター車両まで! |
もう、なにがなんだか・・・ | 西側でも東側でも・・・。 |
平和の象徴「ブルーアボット」 | 会場のホップファームのロゴ付きです |
お揃いの塗装でこんな車両も | もう何があっても驚かなくなってきました |
ホンモノのW号戦車スプロケットが6万円で販売! | これはもちろん買いました! |
5年前にコレを見たときは驚きました!世界は広い! | 総金属製、精密でラジオコントロール! |
どうでしょう?こんなイベントが水曜日から始まり、日曜まで5日間も続くのです。特に週末になるとお客さんの人数もふくれあがり、様々なショーも開かれます。ドイツ軍、連合軍に分かれてホンモノの車両を使った模擬戦は圧巻、例えがいいかどうかわかりませんが戦争映画の撮影シーンのまっただ中にいるようです。 |
すべてがリアリティーを伴う | 総員、出動用意! |
前へ進め! | ここで待機! |
敵襲! | 急げ! |
ヤンキーだ! | W号戦車被弾! |
一旦退け〜! | M4シャーマン現る! |
一気にカタをつけろ! | M5戦車も前へ! |
やはり主役のタイガーT!来たぞ!! | 究極のリアリズム |
映画のワンシーンみたい・・・ | こんなに大勢の人々が見つめます |
戦争が好きな人間なんて、もちろん誰もいません | みんなが平和をかみしめています |
小さな勇気を出して声をかければ・・・ | こんなステキな笑顔にも出会えます |
グレン・ミラーが! | ウィンストン・チャーチルが!! |
帰国してすぐ、拙作1/16RCタイガーTを塗り直し! | オーナーズミーティングでも異彩を放ちました |
「War & Peace SHOW 2002」・・・いかがでしたか? 確かに日本にいたままでは“夢のまた夢”のイベントです。 でも・・・イギリスはあまりにも遠い。長期休暇が取れない。決して小さくない金銭的負担がある。何よりも、いったいイギリスのどこでやっていて、どこに宿泊してどうやって会場へ行けばいいのか?・・・5年前に覚悟を決めて渡英した当研究室助手でしたが、それはある方の完璧なサポートがあったからでもありました。 その人の名は尾崎正登さん。AFV模型サークル「ホイールナッツ」の会長でもあり、かれこれ10年以上毎年必ずベルトリングに通い続けている方でもあります。その尾崎さんに事前に細やかなアドバイスを受けて準備をしてから日本を発ち、この年ももちろんベルトリング入りした尾崎さんと現地で合流しました。 尾崎さん行きつけのベルトリングのお店で毎晩楽しい飲み会、「ボクは毎年ココに来るためだけに1年間一生懸命働いているの」が口グセでした。 今年も7月がやってきました。その後、縁あってアーマーモデリングの編集スタッフになった尾崎さんは、もちろん今年もベルトリングへ向けて成田空港を飛び立ちました。編集作業が一番忙しい月末に1週間以上日本を離れるので、同僚スタッフに迷惑をかけないようにと、猛烈に仕事をこなしてからの出発です。 尾崎さんが渡英して2日後、不可解な情報が入りました。 「あの・・・・、尾崎さん・・・・・亡くなられたそうです」 「は?」 未だに混乱しています 現在ワタシが聞いている情報は、尾崎さんはイギリスに到着してボービントン戦車博物館を見学し、レストランで食事をしてホテルに戻ってから「頭が痛い」と訴え、救急車で病院に運ばれたがそのまま・・・。クモ膜下出血とのこと。 未だに混乱しています あんなに豪放磊落で、いつも笑いの中心にいて、飲み会の中心にいて・・・・ 先月末にアーマーモデリングの編集部にタミヤ1/21M4シャーマンの拙作を持ち込んで、あ〜でもない、こ〜でもないと1時間ほど2人でバカ話をしたのが最後になってしまったというのでしょうか? 尾崎さん、あなたがあれほど愛したベルトリングの「War & Peace SHOW」を、5年も経っちゃったけど紹介しましたよ ・・・・・・って、遅いよね 今年は、ボービントンは行けたけど、ベルトリングは見てないの? まだ気持ちの整理がつきません。 (2007/07/28) |
会場で「お〜い!助手さ〜ん!!」との“日本語”に振り向くと、あんな上から・・・ 何年も通い続けているお友達が持ち込んだフォーデン6X6回収車の上でバンザ〜イ。 |
ベルトリング会場近くのお気に入りレストランにての尾崎さん・・・ |
残念ながら・・・現実でした・・・・・・・・・・・合掌。 |
号数 | 年 | ページ | 内容 | 備考 |
7 | 1998/02 | 70〜73 | ベルトリングラリー1997 | 「ベルトリングラリー1997」リポート! モノクロページなのが残念 |
12 | 1998/12 | 86〜89 | ベルトリングラリー'98 第1回 | 土居さんと笹川先生も現地で合流 |
13 | 1999/02 | 85〜88 | ベルトリングラリー'98 第2回 | 買い物紹介 |
14 | 1999/04 | 75〜78 | ベルトリングラリー'98 第3回 | トラック・トラック・トラック |
17 | 1999/10 | 39〜41 | ベルトリングラリー'99 レポート1 | 1ページのみだが初のカラーページ ファモが登場 |
18 | 1999/12 | 91〜92 | ベルトリングラリー'99 レポート2 | 模型ブース主体レポート |
23 | 2000/10 | 34〜37 | 尾崎正登の ベルトリングラリーレポート2000 その1 |
この年から2日間増え、5日間開催に 「その2」は掲載されず |
30 | 2001/12 | 103〜106 | 尾崎正登のベルトリングラリー訪問記 | 2001年、モーリス物語 |
31 | 2002/02 | 111〜113 | 尾崎正登のベルトリングラリー訪問記 | コンバットドレッシング |
48 | 2003/10 | 33 | イラク戦争のニュース映像 | フジテレビ報道ブレインの一人でした |
49 | 2003/11 | 76〜77 | 曽山さんのベルトリングレポ | 一緒に行った曽山さんのリポート |
67 | 2005/05 | 66 | 英国ベルトリングラリー道 | 尾崎正登と行くベルトリング見学の旅 |
73 | 2005/11 | 10〜13 | 88mm砲 | ベルトリング2005報告 |
80 | 2006/06 | 28 | エアブラシの達人 | エアブラシ派代表 |
81 | 2006/07 | 74〜75 | 老眼克服・メガネを作ろうの巻 | モデル兼実用 |
108 | モデラーズフリマオークション司会 | ラメ金ジャケットに蝶ネクタイ | ||
83 | 2006/09 | 4 | 速報!!ベルトリングラリー'06 | 編集者として記事。連載予告? |
84 | 2006/10 | 102〜105 | ベルトリング2006リポート その1 | 5年ぶりの本人王道レポート |
85 | 2006/11 | 68〜71 | ベルトリング2006リポート その2 | かっこいいぞ米軍! |
86 | 2006/12 | 78〜81 | ベルトリング2006リポート その3 | やっぱ模型でショー! |
87 | 2007/01 | 102〜103 | ベルトリング2006リポート その4 | 本場!WWU英国戦車だ! |
88 | 2007/02 | 88〜89 | ベルトリング2006リポート その5 | 本場!WW2英軍・加軍トラック祭り! |
94 | 2007/08 | 114〜117 | 世界最大のプラモデル登場! | 1/35ドーラ製作担当隊長 |
1996年に初めて大塚先生に連れられてベルトリングへ行った尾崎さん。その後1年も欠けることなく毎年渡英し続けました。今年で12年連続の予定でイギリスまで渡ったのに、まさに目前で断たれたことになります。 前の勤務先で毎年7月に長期休暇を取ることをとがめられ、長年勤めた職場を辞めてしまったのは「シゴトを取るかベルトリングを取るかでベルトリングを取った」として知る人ぞ知る逸話です。 まさにライフワークとして毎年アーマーモデリングに報告レポートをなさっていたのですが、2002年は他ならぬワタシがレポートを担当してしまい、翌年2003年は自他共に認める尾崎さんの弟子ソヤマンさんがお書きになってます。2005年は「尾崎さんと行くベルトリングツアー」も旅行代理店により企画されたのですが、残念ながら成立はしなかったようです。 2006年9月号からは縁あってアーマーモデリングの編集スタッフに加わった尾崎さんは、水を得た魚のように2006年のベルトリングリポートをなんと都合6回にわたって報告なさってます。 そして今年の最新号(2007/08号)でフジミのモンスターキット「1/35ドーラを10人で作ろう!」という難しい企画のまとめ役を担当したのが結果的に最後のシゴトになりました。 |
号数 | 年 | ページ | 内容 | メーカー | スケール | 備考 |
2 | 1997/04 | 49〜53 | M-977ヘメット | イタレリ | 1/35 | 初登場!恐ろしいほどのパイピング! 大塚先生「彼の作品を見てヘメットを自分で作る気が萎えた」 |
3 | 1997/06 | 97〜101 | スキャンメル | アキュリットアーマー | 1/35 | 早くも、前年に行ったベルトリング画像登場 大塚先生や金子さんに感謝の言葉 ホイール・ナッツ発足案内も |
6 | 1997/12 | 105〜110 | ダックス& ベルゲパンツァー |
エリート | 1/35 | イギリスIMPS会場で購入した 日本未入荷のレジンキット |
9 | 1998/06 | 112〜117 | M551シェリダン | タミヤ | 1/35 | 0.1mmの鉛板を0.3mmのシャープペンシルで 打ち抜いたリベット8,000個! キャタピラ裏には1,000枚!のプラバン |
12 | 1998/12 | 105〜109 | M911オシュコシュ | ホビーファン | 1/35 | 台湾のレジンキット |
13 | 1999/02 | 16〜18 | ヨーロピアンSASジープ | タミヤ | 1/35 | 「ジープのいる風景」8人競作・最初で最後のビネット? |
15 | 1999/06 | 30〜34 | レオパルド2A5 | イタレリ | 1/35 | 新製品をディテールアップ |
16 | 1999/08 | 105〜110 | M26ドラゴンワゴン | タミヤ | 1/35 | イスラエル軍デザート塗装仕様に |
17 | 1999/10 | 107 | GIジェーン | SOLモデル | 200mm | 話題騒然!1/8女性兵士フィギュア |
24 | 2000/12 | 5〜10 | ファウン・エレファント | アキュリットアーマー | 1/35 | 大型トレーラーのレジンキット |
30 | 2001/12 | 97〜102 | モーリスC90B | アズムット | 1/35 | 40mmボフォース対空機関砲付きレジンキット |
31 | 2002/02 | 106〜110 | ソルタム160mm自走迫撃砲 | AEFデザイン | 1/35 | イスラエル国防軍のレアレジンキット |
EX3 | 2002/03 | 105〜107 | ランチアR/30 90mm自走砲 | クリルモデル | 1/35 | イタリア製レジンキット |
32 | 2002/04 | 31〜33 | M.A.N 10t トラック | ドイツレベル | 1/35 | インジェクションキットも大改造に・・・ |
33 | 2002/06 | 101〜104 | ダイムラー・フェレット | アキュリットアーマー | 1/35 | ベルトリング画像も同時紹介 |
EX4 | 2002/07 | 105〜112 | フォーデン6X6回収車 | アキュリットアーマー | 1/35 | 直後にベルトリングで実車の上でバンザイ写真 |
35 | 2002/09 | 2〜19 | ペングリオン | AEFデザイン | 1/35 | 巻頭から19ページ尾崎正登特集 |
M60A1 | エッシー | 1/35 | イスラエル軍仕様 | |||
M113 | タミヤ | 1/35 | 合計7バージョン作成 | |||
M577 | タミヤ | 1/35 | タミヤディテールアップ | |||
M163 | イタレリ | 1/35 | これが尾崎さんAFVのきっかけらしい | |||
ZSU 23-4 シルカ | ドラゴン | 1/35 | インジェクションで出る時代 | |||
BTR 60 PU 指揮通信車 | トロフィーモデル | 1/35 | なんでもあり | |||
ランドローバーFC101 | ダートムーア | 1/35 | まさに尾崎ワールド | |||
FV180戦闘工兵トラクター | アキュリットアーマー | 1/35 | 尾崎さんとアキュリットの名コンビ | |||
37 | 2002/11 | 10〜14 | ZSU 23-4 シルカ | ドラゴン | 1/35 | 2台目のシルカはマインローラー付き |
70 | 2005/08 | 91 | T号指揮軽戦車 | ドラゴン | 1/35 | ニューキットレポート(模型製作再開) |
71 | 2005/09 | 94〜95 | AB41装甲車 | イタレリ | 1/35 | 過去のレジンキットと作り比べ |
100 | FuMG62迎撃電波探知機 | DES | 1/35 | こんなマイナーアイテムを、流石尾崎さん | ||
72 | 2005/10 | 95 | ベルゲパンター | ICM | 1/35 | やっぱり尾崎さんテイスト |
74 | 2005/12 | 92〜93 | SAM-6対空ミサイル | トランペッター | 1/35 | 中東戦争の主役もインジェクション |
76 | 2006/02 | 94〜95 | SAM-6対空ミサイル | トランペッター | 1/35 | カステンキャタをはき塗装 |
96〜97 | GMC CCKW352改造キット | REAL MODEL | 1/35 | タミヤトラック改造キット | ||
78 | 2006/04 | 93 | デマークD7 | イタレリ | 1/35 | モデラー卒業記念?編集部員に |
79 | 2006/05 | 12〜15 | ピラニア | トランペッター | 1/35 | お手軽ドレスアップで差をつけよう |
84 | 2006/10 | 91 | T34/85 | ホビーボス | 1/48 | 初の1/35以外? |
85 | 2006/11 | 96〜97 | FLAK41ドイツ88mm高射砲 | クロムウェルズモデルズ | 1/35 | ベルトリングテントで現地購入 |
87 | 2007/01 | 20 | 17ポンド対戦車砲 | アキュリットアーマー | 1/35 | これがAFV遺作? |
なんと創刊2号から作例を紹介なさっていた尾崎さん。ヘメット、スキャンメル、オシュコシュ・・・まさに尾崎ワールドですね。 M551シェリダンでは極小リベットを作るため0.1mm厚の鉛板に0.3mmシャープペンシルで打ち抜いて自作。これをなんと8,000個も作ったのです。キャタピラはキットのポリキャタピラをディテールアップ・・・今の目で見たらご意見があるかとも思いますが、極小パイプでサイドから印をつけたのが1,000カ所、裏側に1枚1枚貼ったプラバンも1,000枚。今でも語り継がれる力作です。 特筆すべきはVol.35(2002/09号)です。砂漠AFV特集として巻頭19ページも飾り、もちろん表紙にもなりました。 その後2002年途中からは作例がしばらく紹介されない時期が続きますが、2005年からはニューカマーキットのストレート組み担当になり、的確なレポートを書き続けました。 「あっと驚くオバカなマイナー大型レジンキットを完成させる・・・」まだまだ楽しみな名モデラーでした。残念です。 |