1/76ジオラマセットシリーズ



タミヤの1/35ミリタリーミニチュアシリーズによってブレイクした1970年からのミリタリーブームを他社も黙って見ていません、バンダイは1/48機甲軍団シリーズ,ハセガワは1/72のミニボックスシリーズ、そしてフジミは1/76ワールドアーマーシリーズをそれぞれ発売し、対抗し始めました。もちろん後発ですから工夫を凝らします。バンダイは内部構造再現、ハセガワは得意の飛行機とのスケール共通性、そして国際スケールのフジミはジオラマセットで特異性をはかりました。

当研究室助手が幼年期を過ごしたのがあまりにも田舎だったのか、当時、フジミの単品の1/76ワールドアーマーシリーズを全く知りませんでした。一人前にタミヤ1/35にそれなりにはまっていたある日、おもちゃ屋の店頭で今まで見たこともないキングタイガーを発見しました。「あれ?これ何?お城のメーカーのフジミだけれど...」と箱を開けてみると、全く想像しなかった中身で“ビビビッ”と来てしまったのです。それは「キングタイガー」では無く「バルジ大作戦セット」だったのです。隣町のお祭りに行った時に初めて入ったおもちゃ屋だったのですが、どんな頼み方をしたのかその場で父親に買ってもらえました。今でもあの時の店頭の情景が鮮やかに甦ります(本当なんです)。ミニスケールのジオラマセットという全く新しい発想に完全にイカレてしまったのでした。

家に帰って早速製作開始、キングタイガーが出来た(素組み未塗装)ところで、付属の真っ平らなベースに置き、これまた付属の樹木を並べればすっかり心は映画監督。M4シャーマンを組み上げるのがもどかしく、大事なストックの中からミドリ1/76シャーマンの完成品を引っぱり出してきて、一夜にしてアルディンヌの森を再現!?してしまったのです。翌日には、レベルカラーの筆塗りでキングタイガーを迷彩塗装をして、いよいよ実感アップ。フジミのシャーマンも完成し、こちらはなんと冬季迷彩ということで「白」一色で塗装!しかし筆を良く洗ってなかったため、うっすらとピンクのシャーマンになってしまいました。「白は専用の筆をもう一本用意しましょう」という記述を「少年プラ模型新聞」で読んだのは、しばらくしてからです。

例によって話が横道にそれたので整理しますと、フジミは単品のAFVである「ワールドアーマーシリーズ」を1971年11月から発売し、すぐに歩兵セットなどの「ジオラマシリーズ」も平行して発売し、2本立てで1/76の商品を展開します。1973年1月からハセガワが1/72ミニボックスシリーズ新発売で大攻勢をかけるのを受けて、先発ミニスケールメーカーの面目躍如といったところで3月にこの「バルジ大作戦セット」を発売したのでした。分厚い平らなジオラマ用飾台とポリエチレン系の樹木が3本、そしてワールドアーマーシリーズかジオラマシリーズからのキットが3点入って¥600は十分納得のいく物でした。その後、当研究室助手は何かのイベントごとに、「アフリカ戦線セット」、「ドイツ電撃作戦セット」と買ってもらい、さらにその気になって捜してみると単品のワールドアーマーシリーズを各所で発見し、こちらは自分で買い続けました。一気に揃い始めたこの年の11月には「ベルリン大防衛戦デラックスセット」が出ますが、既に中に入っている4キットを所有していた事や「デラックス」になって¥1000になってしまった事などもあり、買うのをやめまし た。その後、私の田舎でエレファントの単品を見つける前に「クルスク大戦車セット」が出てしまいずいぶん悩んだのですが、友人が買ったのでこれもあきらめ、後日単品のエレファントを購入しました。

と言ったわけで白状しますと、1973年は殆どフジミにはまり込んでいた1年でした。やはり一つが¥150という値段や、どれだけ買っても場所を取らずジオラマが再現できるところが魅力だったでしょうか。そして「バルジ大作戦」との出会いがあまりにも強烈だったことがあげられます。そして最近知った事なのですが、なんとボックスアートはタミヤから独立なさったばかりの大西将美画伯だったのです!このジオラマシリーズ6点はすべて氏の作品ですが、それまであった他のキットとは明らかに構図が違います。それは単品キットだと、どうしても一つがアップになりあとはオマケなのですが、キットには主役が3つも4つも入っているのです。それを堂々と効果的に配置したボックスアートはやはり斬新でした。そしてなによりも「兵士」の表現が秀逸だったと思います。田宮模型歴史研究室の助手としてこの浮気の1年間は恥ずべき?年ですが、「大西画伯のボックスアートに引きずられていったので許して下さい」というのはかなり苦しい言い訳ですね。

ちなみに単品の「バレンタイン戦車」と「ジオラマアクセサリー(テントセット)」、「ジオラマアクセサリー(トーチカセット)」、「イギリス歩兵」の合計4点も大西将美画伯の作品で、その他の単品キットとその後に出る「ワンカットシリーズ」と「ビッグバトルシリーズ」はすべて中西立太画伯の作品であることが判りました。これについても後日機会を見てお話しします。
バルジ大作戦セット キングタイガー M4シャーマン ドイツ歩兵セット
アフリカ戦線セット マチルダ ドイツ88mm砲 アクセサリー
ドイツ電撃作戦セット 38tプラガ ドイツ兵員輸送車 アクセサリー
ベルリン大防衛戦セット ヤクトティーガー ヘッツアー ドイツ歩兵セット アクセサリー
クルスク大戦車戦セット エレファント T−34/76A カーベー1A ドイツ歩兵セット
ノルマンディー上陸作戦セット M4シャーマン ヘッツアー ドイツ88mm砲 アクセサリー

(1999/06/20)